君の膵臓をたべたい①住野よる
audiobookでの1冊目。主人公は鈴村健一でヒロインは堀江由衣。聞いていて楽しい。
高校生の内面の成長を描いた物語。自分一人で完結した世界を持っていた主人公だが、ヒロインと出会い、他者からの影響を受けて変わっていくこと、また、自身で完結していると認識していた主人公も他者に影響を与えていたことについて気づいていく。
更に、自らは流されるままに生きると考えていた主人公だが、終盤には全ての生じることは自分の選択の結果であると強く認識する。
人は、ただ生きるだけでは不十分であり、人類の価値を増大させることで十分となると考える。そのための方法として、仕事、コミュニティの活動、作品の制作、情報の整理などが挙げられる。自ら価値の生産者として生きることによって自身と他者の得るところが大きくなる。
一方で、社会の中で生きていることは、同時に社会に価値を与えている。少なくとも2人が存在していれば意見の交換という価値の増大活動ができる。仮に会話がなくとも、相手の振る舞いを見ることで自身の振る舞いを振り返るという活動をできる。当初はヒロインが主人公を見て学ぶという一方的なものだったが、互いに会話を持つことにより、ヒロイン及び主人公のどちらにも価値の増大が生じた。終盤では主人公はヒロインの親友との交流も行い、この際も主人公及び親友の両者の価値の増大が見られている。
児童期から思春期にかけて、子どもは親の庇護のもとにあり受け取るだけの消費者から、社会に価値を与える生産者へと移行していく。子どもによってその速さはまちまちであり、ヒロインのように中2で気づくこともあれば、主人公のように高2で気づくこともある。子どもがその段階にいつ来るのははっきりとは分からないが、子どもが自立していくよう少しづつサポートしていきたい。